水丸
暑い夏の日。カラカラと竹筒の音をさせて、ざるを担いだ人がやってくる。ざるの中には水が張ってあるだけ。
「触ってみて」とこちらを見る。
水の中の、水のかたまり。目には見えないけれど、触れるとたしかにそこに在る。
「何これ!」「水...?」「気持ちぃ!」
「水丸。水のこどもです。」
個を持たない水に、個という概念を与える。
海、川、雲、雨。コップの水、そして体内の水。この地球上至る所に在る水達は、その容れ物によって形を変えつつ、全ての水と、水に関わる全てのものと、触れ合ったかもしれない。
人間で言うと、経験のようなものを蓄えている。
水に触れる。本当の意味での触れる。
一瞬の不思議な経験。こんなことがあった。あれは現実だったの?
そんな、信じられないけど、ふと日常に現れた、気になる経験。
届いた人の人生の輪郭を溶かす。そんなアプローチがしたい。

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